以前にこちらの記事でも紹介した池波正太郎さんの「男の作法」から個人的に好きなエピソードがあるので、メモがてら共有します。小説家になる前に役所で税金の徴収係をしていた池波さんが、ある日に税金を滞納していた床屋の男性にした「ある行動」がとても素敵です。
どうしても税金を払わない床屋がいた。あるとき行ったら、ちょうど忌中。奥さんが亡くなって。ぼくは自分の金。五百円だったか包んでね、何もいわずに黙って置いて、その日はそのまま帰ってきた。翌日、一番に来ましたよ、床屋が、税金払いに。
何も役所の仕事なのに自分の懐の金を払うなんて・・と思うでしょう。ところが、結局得をするのはぼくのほう。自分の受け持ちの町内が決まっているわけだ。で、ぼくは自転車でまわって行くと、床屋が店から飛び出してきて、「池波さん!ちょっと寄って行きなさい、ヒゲ剃って行きなさい、この剃刀使いやすいから持って行きなさい・・・」
あれで二十回以上ヒゲを剃ってもらったか。もちろん料金なんか取ってくれませんよ。あのころで一回二百円か二百五十円だったな。何も、それがネライで香典を出したわけじゃないが、結果としてそうなる。 だからいうわけですよ、役人でも会社員でも身銭を切りなさい、と。仕事そのものにね。同僚と酒を飲むことじゃないんだよ。しかし、いまの人は仕事に身銭を切らないねぇ。職場でいつもお茶を入れてくれる人がいるでしょう。そういう人に盆暮れにでも心づけをする人が、まあいない。毎日美味しいお茶をありがとう・・・そういってちょっと心づけをする。こりゃ違いますよ、次の朝から。当然、その人に一番先にサービスする。そうすると気分が違う。気分が違えば仕事のはかどりようもまるで違ってくる。
この文章を読んだ時に「あぁ・・これが人を動かすということなんだ」 と思いました。彼が凄いのは別に損得勘定でした行動ではなく、自然とこのような心づけを床屋の男性にしたこと。普通なら「おいっ!このやろうさっさと税金を払いやがれ!」と言ってしまいそうなところを、相手の状況を読み取り自分のお金で香典を包んで、結果的に相手から自発的に税金を払いに来させた、まさに人を動かすことの本質が池波さんのエピソードが詰まっています。
さらに、このエピソードに似た箇所が別ページにもありました。タクシーを利用した際にタクシー運転手に対していつも100円か200円でも余計にお金を支払う池波さんの「感謝の気持ちは言葉だけでも伝わるけれど、形(チップ)にしないと本当のところは伝わらない」ということが書かれており、これまた「なるほど・・!」と唸ってしまいました。
最近流行しているライフハック系の記事を読むよりも、このような「身銭をきり、心づけをすること」を普段から心掛けて行なう方が、生活や仕事において良い影響をもたらすと思いました。実はダニエル・ピンクの新刊にも同じようなアイデアが書かれており、非常に勉強になりました。
もし今回の記事について「いいね!」と思ったら以下にあるソーシャルボタンでお気軽に記事をシェア(共有)してくださると非常に嬉しいです。もし興味がある方は私のTwitter(@Kohei_41)をチェックしてください。
コメント
コメントを投稿